都市を生きる建築(71)

「生きている博物館」万博ソングが聞こえてきそう…国立民族学博物館

【都市を生きる建築(71)】「生きている博物館」万博ソングが聞こえてきそう…国立民族学博物館
【都市を生きる建築(71)】「生きている博物館」万博ソングが聞こえてきそう…国立民族学博物館
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 1977(昭和52)年に万博公園内に開館した国立民族学博物館は「生きている博物館」といえる。「世界の国からこんにちは」。1970年の大阪万博のテーマソングが、今も聞こえてくるようだ。

 同館は博物館機能を持ち、大学共同利用機関としての役割を担い、大学院教育を行う文化人類学と民族学の研究所と定義されている。つまり、社会から離れて、過去からの文化財を変わらずに収める博物館ではないのだ。展示物は原則として学術資料であり、研究の進展につれて生き物のように入れ替わっていく。館内をさまよって思わぬ物に出合い、世界にさまざまな生き方があることを知る。そんな知性の公園としての楽しさがある。

 研究所であり、収蔵庫も多く必要で、展示物が増え続けるとなると、設計にも固定的な博物館とは違う特別な配慮が必要だ。設計者に指名された黒川紀章は持論である「メタボリズム」という建築思想で、これに応えた。

 この建物の最大の特徴は1辺40メートルの正方形を平面単位とした構成である。基本的に外壁には窓が無く、ロの字形の真ん中に中庭を設けて、そこから光を取り入れるようになっている。上に突き出した円筒形の中に上下階をつなぐ階段やエレベーターが収まる。これによって、研究所などの機能と展示室の回遊性を実現させ、単位の繰り返しで将来の増築にも対応可能とした。

 壁の色は日本の伝統に通じると黒川が主張した「利休ねずみ色」。円筒形のメタリックカラーとは対照的で、伝統と未来を共存させた包容力のあるシステムを印象づけている。黒川は思想を形で分かりやすく示すのが得意な建築家だった。