浪速風

道は遠くとも

雪の結晶の研究で知られる中谷宇吉郎は、物理学者として昭和12年に原子爆弾の出現を予想していた。「弓と鉄砲との戦争では鉄砲が勝つであろう。ところで現代の火器をちょうど鉄砲に対する弓くらいの価値に貶(おと)してしまうような次の兵器が想像できるであろうか」

▶その時すでに、物理学は原子核崩壊の研究に主流が向いていた。行き着く先は、というより目的は原爆だった。中谷は「原子核内の勢力が兵器に利用される日が来ない方が人類のためには望ましい」と警鐘を鳴らした。しかし8年後、「科学もとうとう来るべきところに来たという気持ちになった」。

▶広島はあす6日、被爆から71年の「原爆の日」を迎える。今年5月、初めてこの地を訪れたオバマ米大統領は「核兵器なき世界」を追求する決意を表明した。道は遠い。が、中谷が「想像したくない」と言った「長距離ロケット砲と組み合わされて、地球上を縦横にとび廻る姿」はあってはならない。