3月のベルギー同時テロや、7月の仏南部ニースのトラック突入テロなど、テロが相次ぐ欧州で自爆テロ犯が「カミカゼ」と呼ばれている。語源は日本の神風特攻隊にあるのだが、自爆テロ犯は民間人を無差別に殺害する一方、神風特攻隊は国際法が適用される正規軍の軍人相手だった。両者が別々に用いられるべきなのは明らかだ。しかし、「誤用」はマスコミから国会議員まで幅広い層に根づいてしまったようだ。(ニューヨーク 松浦肇)
「ニースのカミカゼや(パリ同時多発テロで襲撃された)バタクラン劇場の怪物たちは、通常の国家だったら、犯行前に牢屋(ろうや)に入っているか、国土から追放されていたはずだ」
7月19日、オランド仏大統領も出席した仏議会の緊急招集会合。保守系の議員がフランスで相次ぐテロ行為を非難する際、トラック突入テロの実行犯をカミカゼと表現した。
戦後のフランスでは、「殉死者」という意味合いでカミカゼが外来語として輸入された。それが最近のテロ続発を契機に、自爆テロ犯をカミカゼと呼ぶ習慣が定着した。フランス国内のテロ捜査を統括するパリのフランソワ・モランス検事も、記者会見で「カミカゼ」と連発する。