欧州多発テロ

自爆テロ犯を「カミカゼ」と呼ぶ「誤用」はなぜ欧州に広がったのか? マスコミだけでなく、検事も会見で連発

昨年11月、パリのバタクラン劇場でテロ事件を起こした容疑者について報じる仏紙ルモンドの電子版。「バタクランのフランス人カミカゼの1人、イスマイル・オマル・モステファイ」との見出しが掲げられている
昨年11月、パリのバタクラン劇場でテロ事件を起こした容疑者について報じる仏紙ルモンドの電子版。「バタクランのフランス人カミカゼの1人、イスマイル・オマル・モステファイ」との見出しが掲げられている

 3月のベルギー同時テロや、7月の仏南部ニースのトラック突入テロなど、テロが相次ぐ欧州で自爆テロ犯が「カミカゼ」と呼ばれている。語源は日本の神風特攻隊にあるのだが、自爆テロ犯は民間人を無差別に殺害する一方、神風特攻隊は国際法が適用される正規軍の軍人相手だった。両者が別々に用いられるべきなのは明らかだ。しかし、「誤用」はマスコミから国会議員まで幅広い層に根づいてしまったようだ。(ニューヨーク 松浦肇)

 「ニースのカミカゼや(パリ同時多発テロで襲撃された)バタクラン劇場の怪物たちは、通常の国家だったら、犯行前に牢屋(ろうや)に入っているか、国土から追放されていたはずだ」

 7月19日、オランド仏大統領も出席した仏議会の緊急招集会合。保守系の議員がフランスで相次ぐテロ行為を非難する際、トラック突入テロの実行犯をカミカゼと表現した。

 戦後のフランスでは、「殉死者」という意味合いでカミカゼが外来語として輸入された。それが最近のテロ続発を契機に、自爆テロ犯をカミカゼと呼ぶ習慣が定着した。フランス国内のテロ捜査を統括するパリのフランソワ・モランス検事も、記者会見で「カミカゼ」と連発する。

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