■全県的な枠組みづくり目指す
引きこもりやニート、非行、発達障害などの理由で社会生活に溶け込むことが困難な子供や若者を、多様なネットワークで支える地域協議会(サポートネット)の設立が県内で加速し始めた。平成22年に施行された「子ども・若者育成支援推進法」に基づくもので、県は、7月下旬に中信、北信両地区で協議会組織を相次いで発足させた。来年度以降の全県的な運用に向けてノウハウの蓄積を急ぐ。
国は、困難を抱える子供や若者の支援推進に向けて都道府県などに関係機関で構成する地域協議会の設置を促している。背景には、心理面や保健・医療、生活環境など個人的な側面から社会環境まで複雑な要因がからみ合って障壁となる事例が多く、単一の団体による対応では限界にきているという事情がある。
内閣府の調査によると、地域協議会は27年4月現在で都道府県や政令指定都市、中核市などを単位に80カ所で設置されている。その59・7%が「(支援に)関係機関の連携が十分にできていなかった」ことを理由に挙げる。
県が描く県版協議会の姿は、要支援者の個別事例別に複層的なセーフティーネットを提供するため、4広域ごとに支援のコーディネートを行う事務局を置き、民間支援団体やNPO法人、県や市町村などの行政機関、警察、医療・福祉団体が官民一体で連携するというもの。
県内には、先行事例がある。24年度に設置した東信地区だ。県から委託を受けた認定NPO法人「侍学園スクオーラ・今人(いまじん)」(上田市)が支援の中核を担い、これまでに累計108件の困難事例に対応した。同法人サポートネット担当の岡野良太さんは「支援のケースを積み上げていくことが重要で、支援機関同士が常に顔が見える関係を築くことが欠かせない」と話す。
昨年度には、高校卒業後に就労が続かない本人への就職支援と同時に、家族への生活援助が必要なケースがあった。「支援機関が役割分担し、連携によって最適な支援が本人だけでなく家族にも届き、社会とをつなぐことができた」と岡野さんは振り返る。
しかし県内の他地区になかなか波及しなかったのは、調整役となる事務局の不在にあった。県の担当者は「いくら仕組みをつくっても核となる組織がないと、支援の輪はつくれない」と指摘する。
ここに来て中信、北信両地区に相次ぎ協議会が設置できたのは、頼りになる組織の成長がある。中信は塩尻市のNPO法人「ジョイフル」、北信は長野市の企業組合「労協ながの」が大役を担う。いずれも侍学園同様に厚生労働省から「地域若者サポートステーション事業」の委託を受け、若者の就労支援の経験を積んできた。
ジョイフルの横山久美理事長は「事例に沿って各機関がどう連携するかが鍵だ。切れ目ない支援を行いたい」と意欲を示す。
県は来年度以降の早い段階で南信地区でも協議会の設置を目指している。ただ南信は面積が広いうえ、頼れる委託団体が見当たらないという。県次世代サポート課は「先行3地区のノウハウや経験を南信に反映させ、全県的な枠組みをつくりたい」としている。