【産経抄】憲法を読んだことがあるのか 8月3日 - 産経ニュース

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憲法を読んだことがあるのか 8月3日

 米国大統領選の行方を左右するかもしれない。民主党党大会で先月28日、パキスタン系移民のイスラム教徒、キズル・カーン氏が行った演説である。カーン氏の息子、フマユン・カーン大尉は2004年、イラクで自爆テロに遭って戦死した。

 ▼カーン氏は、イスラム教徒の入国禁止を掲げる共和党候補のトランプ氏にこう語りかける。「米国憲法を読んだことがあるのか」。「この文書の中で『自由』と『法の平等保護』という言葉を探しなさい」「あなたは国のために何一つ犠牲にしてない」。

 ▼トランプ氏は、早速反論した。「私も多くの犠牲を払っている。とても困難な仕事をこなしてきた」。的外れどころか、戦死者の遺族を侮辱するような発言に、共和党内からも批判の声が相次いでいる。

 ▼それ以上にトランプ陣営にとって、大きな脅威になっているのが、演説をきっかけに改めてクローズアップされている「アメリカの理念」である。実際カーン氏が演説の途中で、上着の内ポケットから取り出した憲法の小冊子がベストセラーになっている。

 ▼民主党の重鎮だったダニエル・イノウエ元上院議員が存命なら、演説に日系米国人の苦闘の歴史を重ねただろう。日米開戦で日系人は強制収容所に入れられた。イノウエ氏らは「敵国人」の汚名をそそぐために、米軍に志願する。欧州戦線で戦った日系人部隊は、米陸軍最強の呼び声が高い。同時に戦傷者が、けたはずれに多かった。九死に一生を得たイノウエ氏も、右腕を失っている。

 ▼日系人部隊の活躍は、戦後の日系人の地位向上につながった。ただ、強制収容は憲法違反であるとして、あくまで兵役に就くのを拒否した日系人もいた。彼らのもう一つの闘いも、忘れてはならない。