岩波書店発行の『文学』の年内休刊が決まった。文系の学問では定型化した見方ができると、若手はそのヴァリエーションを繰り返す。そんな「研究」がかさぶたのようにくっついて肝心の傷口の真実が見えなくなる。そんな論文に読者が飽きたせいだろうか。
だが独創的な学術論文は上手に書けば、商業ベースでも売れる。それが私の学者人生の経験則だ。私の大学院時代は敗戦後のこととて出版助成金などなかった。それでも「書物を出すこと」で滅びずに生きてきた。「論文を出すか、教職を諦めるか」 publish or perish の原則を日本はもっと尊重すべきだろう。
≪『文学』の掉尾を飾る一文≫
仲間内の学術的隠語(ジヤルゴン)でなく世界に向けて書くかぎり、優れた書物は世に認められる。それで賞を獲(と)れば実力者は自信も増して独立独歩の道を進むだろう。学問の自由はそんな男女が守るもので、反体制の流行に靡(なび)くことではない。日本が自由の国だからといって反権力だけが取柄の教授に大きな顔をされても困る。