書評

関西大学教授、堀潤之が読む『彼女のひたむきな12カ月』アンヌ・ヴィアゼムスキー著、原正人訳 ゴダールとの出会いから結婚に至る激動を描く

彼女のひたむきな12カ月
彼女のひたむきな12カ月

 前作『少女』で、18歳にして鮮烈なデビューを飾った映画『バルタザールどこへ行く』の撮影体験を振り返り、謎に満ちた老監督ロベール・ブレッソンとの共犯的な関係性を見事に浮き彫りにしたアンヌ・ヴィアゼムスキーは、続いて本書で、ゴダールとの出会いから結婚に至るまでの激動の1年間を活写する。

 強烈さを内に秘めた穏やかさが支配していたブレッソンとは打って変わって、『気狂いピエロ』の監督としてキャリアの絶頂期にあった36歳のゴダールは、その旺盛な行動力によって読者を圧倒する。何しろ、何度か会ったことがあるだけのアンヌから、『男性・女性』を見てその作り手も好きになってしまったという告白の手紙を受け取るやいなや、ゴダールはただちに飛行機に乗って、南仏の小村で休暇中の彼女のもとに駆けつけるのだ。実のところ、彼は『バルタザール』の主演女優に、写真を一目見たときからすでに恋していたのである。

会員限定記事会員サービス詳細