きょうの人

外務大臣表彰を受けた書道家・手島泰六さん「文字の中には小宇宙がある」

手島泰六さん(宮川浩和撮影)
手島泰六さん(宮川浩和撮影)

 「少字数の書には世界性があるのです。字は読めなくても、書に込められた感情、感覚は伝わる。外国の人たちの心を揺り動かすことができます」

 書道を通じた日本と諸外国の文化交流の推進で、平成28年度外務大臣表彰を受けた。

 31日まで東京都美術館(東京都台東区)で開催中の「産経国際書展」を主催する産経国際書会の名誉顧問を務める。毎年のように、ブラジルなどの中南米、欧州で個展を開催し、書道文化を世界に発信し続け、同書展の最高賞「高円宮賞」も21年に受賞した。

 父は、前衛とも思える書風で世界的な評価を得た文化功労者の故手島右卿(ゆうけい)。

 「父が、『崩壊』という作品を1957年のサンパウロ・ビエンナーレに出品したとき、自宅に来られたブラジルの博士が、作品から『崩れていくものを感じる』とおっしゃるのです。書の世界性を感じた瞬間でした」

 偉大な父のあとを追うように書にのめりこみ、平成18年にカンヌ国際栄誉グランプリで最優秀金メダル。ローマ法王との謁見も果たした。8月17日からはブラジル・クリチバ、同22日からはチリ・サンティアゴでの海外展も控えている。

 「父は『万象は文字のうちにある』と言いましたが、私は文字の中には小宇宙があると思う。書の奥深さをこれからも世界に伝えていきたい」(福本雅保)

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