今月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は南シナ海領有権問題に関する裁定を下した。最大のポイントは、中国が南シナ海の広い範囲に独自に設定した「九段線」なるものに「法的根拠はない」とし、この海域に対する中国の「歴史的権利」を完全に否定したことにある。
世界主要国の大半が裁定の正当性を認めていることからも、裁定はまったく適切なものであると思う。問題はむしろ、中国政府が今までどうやって、南シナ海に対する自らの「歴史的権利」を主張できたのか、である。
中国側の主張をつぶさに見れば、証拠という証拠の提示はほとんどなく、ひたすら「権利」を主張するだけのいいかげんなものであることが分かる。「九段線」というのは中国が地図の上で勝手に9つの破線を引いて、フィリピンやベトナム近海までを含む広大な海域を「中国のもの」にしてしまった話だ。
国際法の視点からすれば、このような「領有権主張」はまさに乱暴というしかないが、実は現在の中国政府が主張する「九段線」は、かつて中国大陸を統治した国民党政権が設定した「十一段線」から受け継いだものだ。つまり、「国際法無視の領有権主張」に関していえば、今の中国共産党政権も昔の国民党政権も「同じ穴のむじな」なのである。