正論

国家ぐるみのドーピング不正の「元凶」はプーチン統治だ 大誤算招いたリオ五輪参加問題  北海道大学名誉教授・木村汎

 ≪同様の事件は繰り返される≫

 もとより、プーチン大統領自身が、彼らの殺害を直接命じたとは考えられない。しかしながら、反体制的な言動を示す人物が次々に消されるのは、一体なぜなのか。プーチン大統領に対する忠勤度を競う者たちが、同大統領の心中を察知して犯行に及んでいる。例えば、チェチェン共和国のカディロフ首長、そして何よりもFSB要員が直接的、間接的に手を下している-これ以外の適当な答えを私個人は思いつかないのだ。

 プーチン大統領は、彼らの行き過ぎた行動をとがめないことによって、結果的に暗黙裡(り)の承認を与えている。いや処罰しないどころか、昇進さえさせている。例えばアンドレイ・ルゴボイ。英国政府はルゴボイを、リトビネンコ殺害の有力な容疑者とみなし、身柄引き渡しを求めた。ところがプーチン政権はその要請を拒否。ルゴボイを下院議員に選んで不逮捕特権を与えたうえに勲章すら授けた。

 話を本筋に戻すならば、次の結論に達せざるをえない。今回発覚したドーピング隠蔽(いんぺい)事件は、五輪でロシアが獲得するメダル数を増やし、国威発揚につなげたいとするプーチン大統領の意をくんで、その走狗(そうく)と化したスポーツ省ならびにFSBにとっては当然の行為に他ならなかった。とするならば「プーチノクラシー」の本質が変わらない限り、同様の事件が繰り返されると予想すべきだろう。

北海道大学名誉教授・木村汎(きむら ひろし)

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