阪神の若きエース、藤浪晋太郎(22)の不振は「心」の問題にあらず。阪神OBの江本孟紀氏は、3年間の疲労の蓄積とトレーニングの失敗だという。
「ルーキーでもベテランでも疲労は同じ。200イニング近く投げれば肩や肘はボロボロ状態。本来ならシーズンが終了したら1、2カ月はボールを投げず、治療に専念しなければいけない。若いから鍛えろ? とんでもない話だ」
昭和60年代、球団は秋季練習を終えると、1年間フルに働いた投手、野手たちを勝浦温泉(和歌山)で1カ月近く「温泉治療」させた。鍼(はり)、灸(きゅう)、電気、マッサージ…あらゆる技術を使って疲れを取った。だが、そんなすばらしい制度も「12月や1月まで球団に縛り付けられたくない」というプロ野球選手会全体の大きな流れの中で消滅。以後は選手個人で-という形になってしまった。
「オフに遊びたい気持ちはよく分かる。でも、商売道具だからね。どうやって肩や肘をケアしたらいいのか。オレたちの時代は小山(正明)さんや金田(正一)さんたち先輩が教えてくれた。田淵(幸一)さんからも毎年『エモ、一緒に来い』と温泉に誘ってもらった。今の若い子たちには、そんな先輩もいない」
藤浪は昨シーズン中盤から右肩に違和感を覚えながら投げていたという。10月19日、大阪市内の病院で検査をうけ「右肩関節周囲炎」と診断され、2、3週間の投球禁止令。そして11月の秋季キャンプに参加した。この時点で治療に専念していれば…。