緊迫・南シナ海

米が出遅れて中国のASEAN分断許した ケリー氏入り前日に工作

 【ビエンチャン=吉村英輝】ラオスで26日に閉幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)関連閣僚会議で、米国のケリー国務長官は、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の裁定をてこに、日本などと対中包囲網の形成を狙った。だが、肝心のASEANは中国の分断工作を受け、共同声明への仲裁裁定言及を断念。中国の後手に回り、想定外の苦戦を強いられた。

 ケリー氏は26日、現地で記者会見し、「ASEAN諸国を含む多くの国」が仲裁裁定を受けた南シナ海問題の平和的解決を目指しているとの認識を示し、「勇気づけられた」と述べ、ASEANとの共同歩調をアピールした。

 米国務省によると、欧州歴訪から25日午後に現地入りしたケリー氏は、ASEAN議長国ラオスの外相と会談し、仲裁裁定を支持する共同声明の発出などを促した。だが、その時点で、声明は発表済みだった。

 一方、中国の王毅外相は前日の24日から、声明文案をめぐりまだもめていたASEAN各国の外相と会談を重ね圧力をかけていた。ケリー氏の出遅れ感は否めない。

 ケリー氏は25日、仲裁裁判所の裁定が示されてから初の米中外相会談に臨んだが、内容についてはコメントしなかった。王氏は仲裁裁定を「フィリピンが一方的に申し立てたもの」と認めない姿勢を崩しておらず、議論は平行線をたどったとみられる。

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