≪「自分らしく」を支える≫
限られた時間を生きる患者にとっても、その家族にとっても大切なはずの時間が、目的化された治療継続の中に埋没してしまっている様子がわかる。
そして延ばされた生存期間を、どう生きてよいかもわからず、不安のなかで、途方にくれながら過ごす患者・家族の状況も、痛いほど伝わってくる。
治癒が困難で、いずれ死に向かうにしても、一人でも多くのがん患者が、自分らしく人間らしく生きることができるような支援(緩和ケア)の在り方は、延命を目指した治療の継続以上に重大な課題ではないだろうか。
もちろん、この問題に気付いている関係者は、当然いる。病状の悪化を想定し、その時をどう生きるか、を事前に考えておくアドバンス・ケア・プランニングの取り組みが始まっている。
また、患者同士や医療者がフランクに交流し、その悩みや疑問を分かちあい、支えあう「がんサロン」や「がんカフェ」などの取り組みも始まっている。延命のための治療をどうするかのみならず、その延命された時間をどう生きるのかを支える取り組みが広がることを望みたい。(ケアタウン小平クリニック院長・山崎章郎
やまざきふみお)