正論

「人生の最終章」しっかり生きる時間持てぬまま死に直面…日本のがん医療が直面する課題 ケアタウン小平クリニック院長・山崎章郎

 このような状況は分子標的治療薬登場以前であれば、もっと早い段階で、治療継続を断念せざるを得ない場面であった。残念なことではあったが一方ではその後をどう生きるか考える時間もあった。

 上記現状について専門誌『緩和ケア』(青海社)の2013年9月号の「らしんばん」に、栃木県立がんセンター外来化学療法センターの看護師、高田芳枝さんは、次のように寄稿している。現場の声を通して先述したわが国がん医療の課題が浮かびあがってくる。

 彼女は現在のがん医療の問題として「一つは治療効果が見られ生存期間の延長が得られても、本人の満足感が薄いこと、次にがん治療の継続自体が目的化していること、そして、本人と家族が死を考える時間が十分持てなくなっていること」を挙げる。さらに、患者の「死ぬのは分かっているけど、今から死ぬまでの経過が、まるでブラックボックスなんだ、どうなるのかが分からないから、どうしていいかも分からないんだ」(一部抜粋)という言葉を示し、「現在のがん医療の状況を表しているように思えます」と言っている。

会員限定記事会員サービス詳細