国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががん死する時代である。老化に伴う疾患でもあるがんは、超高齢社会に向かうわが国では、今後さらに増加すると予測されており、結果、がん死者もますます増加することになる。もはや、がんになることも、がんで死亡することも、青天の霹靂(へきれき)などではなく、日常的な出来事になるのである。
≪次から次の治療のなかで≫
がんになったら、どう対処するのか。多くの人はその病態に応じて、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)のもとに、それぞれのメリット、デメリットも含め、手術、化学療法、放射線療法などの治療法を提示され、自分の納得のいく治療法を選ぶことになる。もちろん治療を選ばないという選択肢もある。また担当医の説明だけで納得できなければ、他院の専門家の意見を聞くいわゆるセカンドオピニオンを求めることもできる。
そのようなプロセスを経て、治療が開始され、治癒に至る場合も少なくないが、それでも年間約37万人が、がん死しているのがわが国の現状なのである。
さて、その死が避けられないのであれば、適切な緩和ケアを受けながら、死までの時を、どこで、誰と、どのように生きるのかは、その人にとって重大な課題のはずである。