衝撃事件の核心

顔面にたたきつけた〝愛のハンマー〟 「かわいそうだが先に逝け」…精神疾患の長女殺めた老夫婦の窮状

一家の月の収入は父親の年金11万円と、長女の障害基礎年金6万円。だが、障害基礎年金は長女が全額自分の趣味に使う。生活費になるはずの年金も、長女の携帯電話料金や好みの食べ物代に消え、毎月の支出は約30万円に上った。赤字分は預金を取り崩す生活だったが、それももう底をつく。

「一家心中しかない」と母親は、父親にほのめかした。自家用車の車検は11月22日に切れる。外出に車が必須の長女の機嫌を損ねないためには、それまでに心中を実行する必要があった。そして犯行日の18日を迎えたのだった。

被告人質問で検察側から「殺害せずに済む方法はなかったのか」と問われると、父親は「ないですね」と言い切った。

母親は夫婦だけの心中だけでなく、長女を道連れにした理由を聞かれ、「あの子は私がいないとどういう風になるか。考えただけでつらいことです」と涙ながらに答えた。

7月14日の判決公判で、裁判長は「経緯や動機には同情できる事情がある」としつつも「事態打開に向けた具体的方策を講じたとはうかがわれない」として、ともに懲役3年(求刑懲役7年)の実刑を言い渡した。

NPO法人「日本トゥレット協会」の理事で、小児神経学クリニック(東京都)の星野恭子院長は「上手に治療すれば、本人の能力を伸ばすこともできる疾患。適切なサポートがなく悲しい偶然が重なってしまった例。他人事ではなく、身を引き締めてしっかりと日々の診療にあたりたい」と一家の窮状をおもんぱかった。

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