主張

トランプ氏演説 偉大な米国につながるか

 米共和党の大統領候補となった実業家トランプ氏は党大会での指名受諾演説で「米国を再び偉大にする」と強調した。

 「米国第一主義」を掲げたトランプ氏は、米軍を立て直すため同盟国にさらなる負担を求め、米製造業の壊滅につながるとする環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は拒否するという。

 米国が「世界の警察官」の役割を弱める間隙(かんげき)を突き、中国やロシアは力による現状変更を進め、暴力的過激主義が蔓延(まんえん)した。「偉大な米国」に異存はない。実際に強い米国が復活するなら歓迎だ。

 問題は、トランプ氏の政策でそれが実現するのかという点だ。

 トランプ氏は、米国が巨額の経費を使って一方的に同盟国を防衛していると主張し、「負担増に応じなければ駐留米軍の撤退を検討する」と語るが、認識そのものが誤りだ。

 米軍の海外展開は世界戦略の一環であり、南シナ海など重要な海上交通路(シーレーン)の航行の自由を守ることは米国の安全保障に直結している。

 自由貿易は戦後の米国の繁栄の基礎であり、共和党本来の考え方ではなかったか。TPPは、覇権主義を強める中国ではなく日米が中心となり地域の新たな経済秩序を構築することに意義がある。

 民主主義と自由貿易を掲げる国同士が結ぶ重層的な同盟関係が国際社会を安定させ、それが米国の国益も支えていることを忘れてはならない。

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