盛夏の挑戦 国立劇場で自主公演 尾上右近、おじさまから音羽屋型の勘平/中村歌昇・種之助、兄弟がぶつかり合える演目に

 一方、「双蝶会」は中村吉右衛門(72)監修のもと、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の「車引」と「寺子屋」を上演する。

 本公演でも役割が重くなっている歌昇と、父・中村又五郎(60)譲りの巧みな舞踊で注目される種之助は勉強会ゆえ、「真っ向から兄弟がぶつかり合える演目を選んだ」と話す。「車引」では、それぞれ松王丸(歌昇)と梅王丸(種之助)の兄弟役で火花を散らし、「寺子屋」では種之助が菅原道真の旧臣、武部源蔵を演じる。

 わが子を身代わりにする松王丸を通しで演じる歌昇。今年2月に長男が誕生し、「感覚が変わった」という父親の心情を生かす。「見えないところで心を動かすのがすごく難しい役。緊迫感を大事にしたい」と、表情を引き締めた。

 種之助演じる「車引」の梅王丸は、父が又五郎襲名披露で演じた憧れの役。「父の襲名のときの形や声が思い浮かぶ。父の松王はこんなものではなかった、と自分にハッパを掛けられる」と、理想像は明確だ。源蔵役は今年5月、楽屋が同じだった吉右衛門の指導を連日、仰いだ。

 「源蔵次第で芝居が面白くなる、と吉右衛門のおじさんはおっしゃった。本番の舞台より大事な時間でした」と、感謝の言葉があふれた。共演は中村梅枝(ばいし)(28)、米吉(23)ら。未来の「菅原伝授-」を先取りした舞台としても楽しめそうだ。

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