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「ある国が長期的な利益を犠牲にして、短期的な利益をもとに決定を下すことは、これが初めてではないだろう」
1973(昭和48)年11月、日本を訪れた米国務長官、ヘンリー・キッシンジャー(93)は日本側にいやみを言った。在日米大使館の首席公使だったトーマス・P・シュースミス(故人)の証言によれば、外相、大平正芳との会談での言葉だったという。
この年10月に勃発した第4次中東戦争は石油危機の形で日本を直撃し、首相、田中角栄は原油確保のためアラブ諸国寄りの姿勢を強めていた。イスラエルを支援し続けてきた米国との足並みは乱れた。キッシンジャーは日本人について「私は彼らを理解できない」ともこぼした。
キッシンジャーは12月17日、イスラエル首相、ゴルダ・メイアらとの会談で田中への不満をぶちまけた。米外交文書によると、キッシンジャーはメイアにイスラエルへの国際的な風当たりが強くなっていると説明しながら、田中を名指して語った。
「先見の明を欠き、勇気がないことを認めたがらない複数の政府は、イスラエルを非難することで何か仕事をしているように思わせようとしている。田中は私に『(翌年)7月に選挙があるので、何かをしていることを見せなければいけない』と言った」