浪速風

世界に広がる猛暑と不安

芥川龍之介が自殺したのは昭和2(1927)年7月24日だった。友人の久保田万太郎に「芥川龍之介仏(ぶつ)大暑かな」の追悼句があり、芥川賞を創設した菊池寛は「年毎の二十四日の暑さ哉」と詠んだ。命日である「河童(かっぱ)忌」は、その暑さで記憶されたようだ。今日は二十四節気の「大暑」である。

▶龍之介が「将来に対する唯(ただ)ぼんやりした不安」(「或(ある)旧友へ送る手記」から)と書き残したのは有名だ。自殺の動機は個人的なものであろうが、大正末からの不況は昭和恐慌となり、世の中全体が漠然とした不安にかられていた。今年の夏は、猛暑とともに、世界にはっきりとした不安が広がっている。

▶フランス南部ニースで起きたトラック暴走テロや、トルコのクーデター未遂に続く非常事態宣言、米国での相次ぐ警察官銃撃事件など、衝撃的なニュースが次々飛び込んできた。「我々人間の特色は、神の犯さない過失を犯すということである」。龍之介の箴言(しんげん)を思い出す。