都市を生きる建築(70)

空間と文化のリレー「丸一商店」

 移転に際してのインテリアの改修設計を、幸運にも私が担当することになった。あの村野藤吾の建築に手を入れるということに怖さも感じたが、ともかく元のフジカワ画廊がもっていた空間の魅力を損なわないように考え、設計した。まずは楽器や部品、関連商品の在庫を収納するスペースが大量に必要となることから、元の展示壁に大きな収納棚を埋め込み、部屋の奥にも倉庫を確保した。倉庫を壁で区切ってしまうと、元の画廊にあった空間の奥行きが損なわれてしまうため、カーテンで軽く仕切って、その奥に空間が続いていると感じられるようにした。また1階と2階は吹き抜けで一体になっていて、立体的な空間構成が大きな特徴になっているが、2階の元社長室をレッスン室にするため、音を遮断する必要があった。そこで完全に遮音することはできないが、強化ガラスだけで区切って、できるだけ元のままに見えるよう工夫した。その他にも古い建物の改修は想定と異なる部分が多く、工事が始まってからも変更の連続でヒヤヒヤすることも多かったが、何より村野藤吾の空間を尊重するという設計方針への、丸一商店さんのご理解のおかげもあって、何とか元の空間を引き継げたのではないかと思う。

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