角栄逮捕・40年後の証言(2)

無罪を信じ米国人代理人を断った元首相…依頼した石井一氏は「追い落とそうとした米政権のワナにはめられた」

【角栄逮捕・40年後の証言(2)】無罪を信じ米国人代理人を断った元首相…依頼した石井一氏は「追い落とそうとした米政権のワナにはめられた」
【角栄逮捕・40年後の証言(2)】無罪を信じ米国人代理人を断った元首相…依頼した石井一氏は「追い落とそうとした米政権のワナにはめられた」
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 ロッキード事件で田中角栄が受託収賄、外為法違反容疑で逮捕されてから6年半後の昭和58年1月26日。検察は田中に懲役5年、追徴金5億円という求刑を突きつけた。だが、嘱託尋問調書の証拠能力に早くから疑問を投げかけ、田中への有罪判決を突き崩そうとした幻の代理人がいた。米国人弁護士、リチャード・ベンベニステ(73)である。

 ベンベニステに田中の代理人を依頼したのは、当時48歳で当選5回の自民党田中派衆院議員だった石井一(81)。

 「検察側の田中有罪ストーリーを潰すには、国内の法廷闘争だけでは勝てない。米国で調査を進めて真相に迫らなければならない」

 石井は田中の求刑を聞いてこう決意し、協力してくれる弁護士を探しに渡米した。米スタンフォード大大学院時代からの友人を介して、ベンベニステと出会う。当時40歳。ニクソン米大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の主任検事を務めたすご腕の弁護士だった。

 2月、石井は米ワシントンの事務所を訪れ、ベンベニステと面会。ロッキード事件の関連資料を渡し、田中の弁護への協力を依頼した。10日ほどして「引き受けましょう」という返事が届いた。

 改めて渡米した石井に、ベンベニステは「この事件には絶対、陰謀が絡まっている。底が深すぎるし、奇々怪々だ」と語った。

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