--宮部みゆき選考委員に『圧倒的な読み心地のよさ』との選評があった。文章をつくるうえで心がけていることは
「選評に関しては、ありがたいなと思います。文章を書くときはリズム、音読して全体のリズムがどうかは考えます。五感も使って、目で見て心で考えるだけでなく、耳で聞こえる、鼻で感じるにおいはどうかと、常に考えて書いている。工夫しているつもりで、誰にも気づかれていないので自分で言うしかないが、ボクが勝手にしゃべるんじゃなく、主人公や登場人物(たとえば)少年や少女だったら、少年や少女が知ってる言葉だけで、地の文章も作る。年配の人が出てきたり語り部だったなら、新しい言葉ではなく、死語も使う。自分を前面に出さず、登場人物に合わせて出てくる言葉も書きわけているつもり」
--コピーライターだった経験は文章にいかされているか
「むしろデビューしたての頃は、長い文章書くのが大変で、クセが直らないところもあったかも。広告のコピーは自分が最高と思ったり、まわりがほめてくれても、相手の宣伝部長がつまんねえなコレといっただけで瓦解する世界。言葉に正解はない。何かを書けば、誰かに何か言われるというのは、小説を書く前から身をもってわかっているので、打たれ強い、何をどういわれても気にしない肝っ玉は広告時代に身につけたと思います」