直木賞会見

作家デビュー20年で受賞 「海の見える理髪店」の荻原浩さん「肩の荷がおりたような」

 「理髪店の話を書くために、書籍で勉強をしたんですけど、これはいっぺん行かなきゃいかん、と。実は僕、こんな髪の毛でも普段は美容室で切ってますから、床屋さんに久しぶりに行かなきゃと。近所で評判の理髪店に行って、体を研ぎ澄ませて一挙手一投足を見たり、ひげを剃るときの感触とかタオルの熱さ、ジョリッという音を全部記憶して。でもそれ一回きりでした。短編の中で書いたんですけど、職人さんに限らず、すべての職業は人のことを考えることではないか。他人に対する想像力が必要で、それをちゃんとやっていれば、真っ当にいい仕事ができるんじゃないかなと思います」

 --髪をそろえる感覚と、文章をそろえる感覚に共通点があるか

 「あるんでしょうかねえ? うーん、それはちょっとわからないです」

 --他にモデルがある作品は

 「特にないが、自分が出会った人、身近な人の日ごろの言葉やしぐさを、常に(自分の)体や頭に蓄積させて書いているのかな。生意気な若い女の子が出てくる(作品がある)んですが、娘によく私じゃないとちゃんと言っといてと言われます」

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