直木賞会見

作家デビュー20年で受賞 「海の見える理髪店」の荻原浩さん「肩の荷がおりたような」

 --埼玉県出身だが、埼玉での家族の思い出があれば

 「普通の家庭だったので、激烈なつらい体験もありません。その代わりものすごく印象的な、ものすごくとんでもない親や兄弟との面白いエピソードがあるわけでもありません。ただ、今回の短編集の中に、親父の形見の時計を持って時計屋さんに行く話があって、出だしのところは実話。うちの父親が2年前に亡くなりまして、本当に父親の形見の時計を持って時計屋さんに行き、古い時計だから修理費にものすごい額を取られた。結局、その時計は1週間くらいで動かなくなった。その時に何とかして元を取りたい、親父のカタキをとってみようかなというのが動機のひとつ」

 --出身地である埼玉県民へのメッセージを

 「埼玉よりも東京在住の方が長くなったんですけども、いまだに区役所を市役所と言い間違えます。甲子園に出る高校は、東京ではなく埼玉を応援します。やっぱり自分の生まれ故郷は一生離れられないんだなと思います」

 --表題作の理髪店のように、各短編の中に魅力的な職人さんが登場する。小説を書く仕事と、職人の仕事と共通性はあるか

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