鑑賞眼

魁春のさりげなさに霊力 国立劇場「卅三間堂棟由来」

 それからが一挙に見どころ満載となって、人間から柳の精へ、斧(おの)の音を聞いて痛みに揺らぐ姿、「実ハ」を明かして夫と息子へ別れを語る苦悩、衣装の引き抜きや消えては現れる仕掛けなど、魁春が蒼然(そうぜん)と見せるさりげなさが霊力と映る。彌十郎の好人物ぶりも効果を上げた。最後の「木遺(きやり)音頭」の場で、緑丸が奇跡を起こす。

 彌十郎の長男、坂東新悟の丁寧な解説「歌舞伎のみかた」が良い。24日まで、東京・半蔵門の国立劇場。(劇評家 石井啓夫)

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