「子供ができたら結婚しよう」。その言葉を信じ、慎重を期して飲んでいた避妊薬の服薬をやめた。そして待望の妊娠。いよいよ結婚…と幸せの絶頂にいた女性は、男性の一言で奈落の底に突き落とされた。「おれの子じゃない。堕ろして」。女性は不当な婚約破棄だとして、男性に慰謝料など約390万円の損害賠償を求めて提訴。1審では敗れたが、2審で逆転勝訴した。妊娠、結婚、出産という人生の一大事について司法の判断は分かれた。
「そして夫婦になる!」
関西在住のA子さんは平成25年夏、共通の友人の紹介でB男と知り合い、秋ごろには交際を始めた。当時ともに20代前半。よほど気が合ったのか、交際当初から結婚の話が出ていた。
裁判所が認定した事実によると、A子さんは過去に中絶経験があり、望まない妊娠を避けるために経口避妊薬(低用量ピル)を服用していた。だが、そんなA子さんに、B男は日頃からこう求めていたという。
「ピル、もう飲まんでもいいやん。子供ほしい」
それでもA子さんは「できちゃった結婚」への抵抗感が強く、ピルの服用を続けていた。
転機となったのは25年冬、A子さんが体調不良で病院を受診した後に、B男から送られてきたメールだった。
「ピルやめなはれ。(子供ができたら)産む!そして夫婦になる」
A子さんはその日から、ピルの服用をやめた。
翌26年1月、B男はA子さんの両親を訪ね、「籍を入れたい」と願い出た。「結婚式は年内に身内だけで」と結婚を見据えた具体的な話もしたという。