緊迫・南シナ海

仲裁裁判所どんな組織? 相手方が拒んでも手続き可能 海洋紛争に限らず立ち上げ

 南シナ海問題をめぐり、フィリピンが申し立てていた仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所に注目が集まった。仲裁裁判所とはどのような組織なのか。Q&Aでまとめた。(ベルリン 宮下日出男)

 Q 仲裁裁判所とは?

 A 「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約は、第287条で「条約の解釈又は適用に関する紛争」を解決する手段として、4つの選択肢を指定している。仲裁裁判所は国際海洋法裁判所、国際司法裁判所などと並ぶ手段の1つに挙げられており、フィリピンが今回、選択した。

 Q なぜ仲裁裁判所を選んだのか?

 A 国際海洋法裁判所や国際司法裁判所と違い、相手方の当事国が拒んでも手続きを進められるからだ。今回も中国が不参加のままだった。領有権や海洋境界の画定に関しては、条約の規定などにより判断はできないが、フィリピンとしては、南シナ海のほぼ全域が管轄下にあるとしている中国の主張を法的に切り崩す戦術をとった形だ。

 Q 常設仲裁裁判所との違いは?

 A ハーグに所在する常設仲裁裁判所は1899年、国際紛争を平和的に解決するための国家間組織として設立された。裁判では通常、裁判所の裁判官が判決を下すが、法律上の仲裁は本来、当事者が第三者を仲裁人に選ぶ仕組みだ。このため海洋紛争に限らず、仲裁裁判所は申し立てのたびに立ち上げられ、常設裁判所は仲裁人候補の名簿を用意しておくなど、その事務局機能を担う。今回の仲裁裁判所はハーグに置かれたが、別の場所になることもある。

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