産経抄

官邸の大失態 7月6日

 中国がまた、トンでもないことを言い出した。東シナ海上空で6月中旬、緊急発進(スクランブル)した航空自衛隊機が、中国軍機に高速で接近して、レーダーを照射したと、日本を非難しているのだ。

 ▼官房副長官は、「挑発行為はない」と反論するが、いささか迫力に欠ける。両機の間に一体何が起こったのか。すでに先月末、元空自幹部がインターネットで実態を明らかにしている。空自機に対してミサイルを撃つ体勢をとる「攻撃動作」を仕掛け、挑発したのは中国機だった。

 ▼小紙の取材に、防衛省幹部も大筋で事実関係を認めている。もっとも官房副長官は、公表した元空自幹部を批判した。本来はこの時点で、中国に抗議すべきだった。中国側は、官邸の弱腰を見透かしている。このままでは、中国側の主張が独り歩きしてしまう。

 ▼6年前の苦い記憶がよみがえってきた。尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件をめぐる、ビデオ流出事件である。映像を見れば、明らかに中国漁船が意図的に海上保安庁の巡視船に体当たりしていた。すぐに公開していれば、中国船の悪質さが国民と国際社会に伝わったはずだ。ところがなぜか、当時の民主党政権は拒み続けた。

 ▼もちろん、国家と国民の安全を保障するために、機密にすべき情報は存在する。とはいえ、中国漁船衝突事件と同様に、今回の東シナ海上空での出来事が、それに該当するとはとても思えない。中国軍機の暴挙を世界に訴える機会が、失われてしまった。参院選挙の最中とはいえ、官邸の大失態である。

 ▼中国機に対する空自機の緊急発進は、今年に入って急増している。何より連日命がけで任務をこなすパイロットたちに、濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着せるようなことがあってはならない。