巨額の予算を投下して進められた最先端の情報管理システムは1人の少年の独学技術によって突破されてしまった。佐賀市の無職少年(17)が、佐賀県の教育システムから県立高校の生徒ら1万人超の情報を盗み取った事件。成績や住所、家族構成などの情報も少年は入手しており、学校現場に波紋を呼んでいる。事件からは、学校側の管理の甘さなども浮かび上がっており、文科省などが対応を呼びかけている。
全国の先駆けたシステムをやすやす突破
「極めて遺憾。窓口を設置して相談に対応したい」。少年が再逮捕された27日、古谷宏県教育長は会見を開き頭を下げた。
侵入されたのは県が独自に構築したシステム「SEI-Net」など。生徒と教諭のそれぞれに専用ページがあり、生徒はデジタル教材のダウンロード、教諭は生徒の個人情報や成績管理などができる。利用にはIDとパスワードが必要だった。
佐賀県は平成26年、クラウドシステムを活用した教育の実証地域として国に指定を受けていた。SEI-Netでは生徒が授業の疑問点などを教諭に質問することなどができ、ICT化で全国の先駆けとなっていた。それだけに少年による侵入は、教委だけでなく文科省にも大きな衝撃を与えた。
学校の敷地内で無線LAN接続…生徒の成績も“だだ漏れ”
少年は「B―CASカード」がなくても有料衛星放送を無料で見られる不正プログラムを制作しインターネット上に公開したとして6月に警視庁に不正競争防止法違反容疑で逮捕されていた。
警視庁によると、佐賀県の事件で少年は各校が管理するシステムの管理者IDでログインし、成績や生徒指導関連書類のほか、職員や保護者の住所や電話番号などを自分のサーバーに保存していた。あらかじめ、何らかの方法で得た生徒のアカウント情報を使ってシステム内に侵入し、システム内に保存されていた管理者IDやパスワード情報を含むデータファイルを解析していたとみられる。