横にも動く「次世代エレベーター」で地下鉄はどう変わる?

MULTIの乗り場を高層ビルの中につくることも可能だ。利用者がオフィスのあるフロアにキャビンを呼べば、地下鉄のプラットフォームまで直接向かうことができる。エスカレーターを何度も乗り換える必要はもうなくなるのだ。

ティッセンクルップの構想では、キャビンの定員は6~10人で、15~30秒おきに新しいキャビンが到着することになるという。混み具合によってすべてのキャビンが同時には必要とされない場合は、一部を休止させればエネルギーを節約できる。

すでに建物の基盤や水道管などの周りに建てられた既存の地下鉄網には、新たな移動手段をつくるための空間的な余裕はない。だがMULTIなら、必要なのはシャフト1本だけだ。

ティッセンクルップは、MULTIのシステムを構築するのに費用がどのくらいかかるかについて語ろうとしないが、駅を大きくせずに(交通網の)キャパシティを増やすことは「駅の開発業者にとっては大きな利益になる」と主張する。また、この新しい移動手段の恩恵を受けうる都市はロンドンだけではない。例えばニューヨークでは、「車椅子の利用者にやさしい地下鉄の駅」は20パーセントしか存在しない。

いずれにしても、ティッセンクルップはまずテストタワーでこのコンセプトの実現可能性を証明し、ロンドン交通局(TfL)にその建設を承認してもらわなければならない。

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