残業しても残業しても、毎月の給料が変わらない。明細上は残業代が支給されている。それなのに、なぜ-。会社の賃金規則が実質的に「残業代ゼロ」になるカラクリになっているとして、大阪に本社がある物流大手の広島支店に勤務するトラック運転手ら9人が6月、会社に未払い分の残業代などとして計約1120万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。「詐欺だ!」と運転手らの怒りは収まらないが、こうした給与体系は、この業界では珍しいことではないという。
なぜ毎月同じ給料
原告となった50代男性は平成25年に入社した。毎朝午前7時半に出勤。広島市内で配送、集荷業務にあたり、午後6~9時に退社していた。
週5、6日の勤務で毎月の給料は手取り約20万円。正月やゴールデンウイークは配送先が少ないため、手取りはさらに減って18万円程度になる。家族は妻と子供が1人。暮らしは決して楽ではない。
入社して半年ほどがたったある日、同僚が愚痴るように言った。
「うちの会社は忙しい月も暇な月も、給料が変わらん」
「そういえば…」と気になって、過去の給与明細を見比べてみた。
確かに同僚の言う通りだった。毎月、異なる金額の時間外手当(残業代)が記載されているのに、どの月も支給総額にほとんど差がないのだ。
「おかしいと思ったが、細かい賃金規則も知らないし、どういう計算式になっているのかも分からなかった」
あるとき、会社の労働組合に質問してみた。
「残業してもしなくても、給料が変わらんのじゃけど」
すると、ある組合員はこう答えた。
「前からその話は出ていて、弁護士に相談したら『会社はうまいことやってるな』と言われたんじゃ」