その他の写真を見る (1/3枚)
政府の中央防災会議は28日、南海トラフで懸念される大地震について新たな防災対策の検討を始めることを決めた。確実な直前予知は困難なことから、東海地震の「警戒宣言」に伴う厳重な規制措置の緩和や、大規模地震対策特別措置法(大震法)で防災対策を強化する地域を南海トラフ沿いに拡大することなどを検討する見込み。予知を前提に構築された国の防災体制が約40年ぶりに抜本的に見直される見通しとなった。
政府は同日、中央防災会議に有識者や関係省庁などでつくる作業部会を設置。8月にも初会合を開催し、年度内に報告書をまとめる。
南海トラフはマグニチュード(M)8級の大地震が繰り返し発生する場所で、西から四国沖の南海地震、紀伊半島沖の東南海地震の震源域が並ぶ。東端の静岡県沖では東海地震が想定されている。
気象庁は東海地震を予知できる可能性がある唯一の地震と位置付け、前兆現象を検出した場合は大震法に基づき首相が警戒宣言を発令。大きな被害の恐れがある8都県157市町村の防災対策強化地域を対象に、住民の避難や交通規制などの厳戒態勢が敷かれる。
しかし中央防災会議の調査部会は平成25年、「確度の高い予測は困難」として予知の実現性を疑問視する報告書をまとめた。これを受け、社会や経済に大きな影響を与える現行の警戒態勢を見直し、規制を緩和する方向で議論する見込み。
情報発信の在り方も見直す。これまでは主に前兆現象の有無を発表してきたが、今後は前兆とはいえない不確実な情報でも、通常と異なる地殻変動が観測された場合は発表し、防災に生かす枠組みを検討するとみられる。