正木利和のスポカル

あの竹中直人がゴーギャンに挑む…演劇とアートの境界線 デトロイト美術館展にて

ポール・ゴーギャン「自画像」の前でポーズをとる俳優の竹中直人さん(寺口純平撮影)
ポール・ゴーギャン「自画像」の前でポーズをとる俳優の竹中直人さん(寺口純平撮影)

 愛知県豊田市で開かれた「デトロイト美術館展」(http://www.detroit2016.com/)で、俳優の竹中直人さんに会った。彼はおしゃれなコートに身を包み、丹念に作品を見て回っていた。とりわけ、ゴッホとゴーギャンの自画像が並ぶコーナーではたっぷり時間を費やし、食い入るように見詰めた。

 と、突如こちらを向き、アゴに手をやってゴーギャンの自画像と同じポーズをとったのである。

 ついつい、彼がデビューしたばかりのころのことを思いだした。若かりしころの竹中さんは、作家の松本清張や遠藤周作、俳優の松田優作などの迫真の形態模写で、お茶の間の人気者へと駆け上がった。

 「多摩美術大学でグラフィックを学んでいたのですが、卒業制作に選んだのが自分のCMでした。コスプレしていろんな人物になった自分のCMを作ってみたんですよ」

 それが芸能界に入るきっかけになる。「作家っていうのはいつも演じたい役のひとつです。原稿用紙に向かっている人ってロマンチックじゃないですか。なかでも松本清張さんや遠藤周作さんはちょっと自分と似ているのでやりやすかったなあ」

 下唇を突き出してめがねの奥からギロリと目をむいたり、手のポーズで穏やかさを表現したり…。対象を観察して特徴をつかみ、なりたい人に近付いていく。そのデフォルメの具合が、人々の笑いを誘った。

 「ゴッホもゴーギャンもとても良いですよね。自画像、好きですね。画家が自分と向き合う…。役者の仕事も基本的にはそうなんで」「ゴッホなら舞台でやってもいいかな。屈折してる人間の方が演じがいがありますし、健康的なヤツより追い詰められた人間、どこかねじれている人ってのは演じる魅力がありますよ」

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