検証・文革半世紀 第2部(7)完

著名作曲家の馬思聡に「草を食え」 日本人になりすまし決死の脱出も

仕事で空港に出入りしていた関は出国手続き中、何人もの顔見知りと出合った。最後に旅券をチェックしたのが日頃、待合室でよく雑談する警察官の劉だった。心臓が飛びだすほど緊張したが、劉は静かに旅券を返してくれた。

カイロをへてドイツに亡命し、後に大学教師となった関は後にこう語った。

「無謀な逃亡が成功する確率は0・1%もなかった。劉さんたちはわざと見逃してくれたのではないか。文革中、あまりにも多くの人が冤罪と絶望の中にいたことを、彼らは知っているからだ」(敬称略)

=第2部おわり

中国総局 矢板明夫が担当しました。

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