理研が語る

生か死か、その違いを生み出すメカニズムとは…真のブレイクスルーを夢見て

【理研が語る】生か死か、その違いを生み出すメカニズムとは…真のブレイクスルーを夢見て
【理研が語る】生か死か、その違いを生み出すメカニズムとは…真のブレイクスルーを夢見て
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 去年の夏、神戸の理研で研究室を立ち上げた。日本の医学部を卒業して、臨床研修もせずにアメリカに行って大学院に入り、そのあと現地で研究員として働いた。高校を卒業して以降は、基本的に、周りの人とほぼ真逆の道を選択してきた。岡本太郎氏の言うところの、二者択一で迷ったらリスクのある方を選択する、というのを忠実に守ってきたわけだ。

 現在、一番力を入れている研究テーマは「生き物は、どうしてがんなどの病気や傷などのストレスで弱り、最終的に死んでしまうのか?」ということだ。

 がんになったり傷を負ったりしても、うまく回復できる場合もある。生か死か、その違いを生み出すメカニズムを知りたい。かなり漠然とした大きなテーマだけれど、日々、生物が死ぬのはどうしてかと考え続けている。といっても、妄想していても何も生まれないので、実験する。こういう漠然とした疑問に答えるには、具体的に実行可能な手法に落とし込む必要がある。

 そのために、僕は、遺伝子操作が非常にしやすくて飼育が簡単なショウジョウバエを使ってこの問題に取り組むことにした。作戦は簡単で、がんや病気で死なない「スーパーハエ」を作り、そのハエたちを詳細に解析する、というものだ。

 時々「がんや病気でハエが死ぬ理由を調べてどうするの?」と聞かれるのだけれど、正直、そんなことはわからない。正確に言うと、研究を続けていけばハエががんや病気で死ぬ理由は明確になってくるはずだけれど、それが人とどう関連があるかは、今の時点ではわからない。

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