【2016参院選】「白鵬」になることなかれ 長野 - 産経ニュース

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2016参院選

「白鵬」になることなかれ 長野

 夏の大決戦の火蓋が切られた。参院選は政権選択選挙ではなく、ときの政権の政策を含めた政権運営に有権者が審判を下す選挙である。アベノミクスや安全保障政策、憲法改正などを争点に与野党が論戦を繰り広げることになる。ところが長野選挙区では本筋から逸脱させる「争点」が表面化している。

 公示前の16日、自民党候補の応援のために信州入りした安倍晋三首相(党総裁)は街頭演説でこう連呼した。

 「落下傘より健太さんであります。どうか、この声を広げていきたい」

 落下傘とは長野県出身でない民進党候補者を指す。自民党の務台俊介衆院議員は21日、松本駅前でマイクを握り「落下傘か健太さんかが最大の争点だ」と言い放った。出る言葉は「落下傘…」ばかり。22日の同駅前での演説でも繰り返した。わが耳を疑った。

 自民党は長野選挙区で「落下傘か否か」を有権者に真っ先に問う戦略らしい。果たしてそれがどれだけ重要なのか。時代錯誤も甚だしく、参院選のあるべき姿ではない。

 国政選挙で同党は落下傘候補を積極的に立ててきた。小泉純一郎政権下の平成17年の郵政選挙でも「刺客」なる落下傘候補を多数擁立した。安倍首相とて自身の選挙区で生まれ育ったわけではない。親から地盤を引き継いだだけだ。

 あまつさえ長野県は「楽園信州」を合言葉として全国に「移住者、来たれ」と呼びかけている。そうした事実に蓋をしながら「よそ者は出ていけ」と言わんばかりのキャンペーンに血道を上げるとは情けない。

 先の大相撲5月場所で横綱・白鵬は、立ち合いの張り手でひるませ、右の肘を見舞うという、綱を張る「品格」のかけらもない荒技を繰り返して賜杯をもぎ取った。現役最強の力士であることは認めるが、そうまでして勝ちたいのか、ということだ。

 長野選挙区での自民党は昨今の白鵬とだぶる。「1強多弱」の政治状況のなかで、姑息な戦術に頼らず、真正面から政策論争で野党を迎え撃つ矜持(きょうじ)はないのか。望むのは、政権党として真の横綱相撲に徹することだ。日米同盟や天皇制をはじめ本質的に路線が違う共産党との「野合」など民進党へのまっとうな攻め手は尽きない。白鵬になることなかれ、である。

 むろん筆者は自民、民進、幸福実現3党のいずれの幇間(ほうかん)でもない。あくまでフェアプレーで戦い抜き、ノーサイドを迎えてもらいたいのだ。(高木桂一)