2016参院選

責任ある一票を、進む主権者教育 神奈川

 22日に公示された参院選は、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初めての国政選挙となった。県内では約16万~17万人とみられる「新たな有権者」に正しく一票を投じてもらおうと、高校や大学では主権者教育の取り組みが進められてきた。主権者教育を小中学校に拡大しようという検討も始まり、切れ目のない政治参加教育の機運が高まっている。

 5月下旬から関東学院大学(横浜市金沢区)で始まった主権者教育の講座。若年層の投票率低下を食い止め、政治参加の重要性を学生たちに伝えることを目的に、今年度の新入生約2850人を対象に行っている。

 出石稔副学長(54)は「模擬投票や現代社会などで選挙について学ぶ機会はあっても、候補者をどう知るのかなどの基礎知識が足りない。今回の講座ではこうした部分を埋め、責任ある投票行動を起こさせなければいけない」と意義を説明する。

 ◆ふさわしい人選ぶ

 法学部の学生を対象に行われたある日の講座では、講師役の「明るい選挙推進協会」の担当者が選挙に向けた情報収集の方法や投票手順、大学進学を機に引っ越しした学生向けに不在者投票制度の仕組みなどを説明した。受講した榎本翔さん(18)は「選挙の仕組みや投票の仕方を初めて知った。テレビで国会を見ると『何でこんな人が?』という議員もいる。自分の一票で国会議員にふさわしい人を選びたい」と話していた。

 県教委は平成23年度から「シチズンシップ教育」の一環として、政治参加教育を全ての県立高や中等教育学校で実施している。先月は小学校・中学校の義務教育段階でも「政治的教養を育む教育」の指導の在り方を議論する検討会議を設置し、今後、社会科や総合的な学習などの中で指導する教員向けの資料を作る方針だ。

 ◆小さなころから

 同会議で座長を務める慶応大SFC研究所の西野偉彦上席所員(31)は「主権者教育は高校だけでは不十分。小さなころから発達段階に合わせた教育を体系的に行うことで、政治リテラシーを身につけさせることが重要だ」と指摘。

 さらに「今回の参院選に向けては各政党が若者向けイベントを実施しているが、今回で(こうした若者向けの選挙啓発が)燃え尽きてしまう危険性もある」と、「18歳選挙権ブーム」に警鐘も鳴らす。

 西野さんは「選挙権年齢引き下げの成果はすぐに出るものではない。投票率に左右されず、若者が選挙への参画意識を持ち続けるにはどうすべきか、冷静な議論が必要だ」と話している。(古川有希)

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