解答乱麻

「道徳」と聞くとなぜ思考停止するのか 「教科化」の何が問題なのか 呪縛を取り除こう 武蔵野大教授・貝塚茂樹

 小学校は平成30年度、中学校では31年度から「特別の教科 道徳」が設置される。今年5月には小学校教科書の検定申請が締め切られ、検定作業も開始された。「戦後70年」越しの課題であった道徳の「教科化」の実現は目前に迫っている。

 しかし今回の「教科化」の議論はお世辞にも十分なものではなかった。「教科化に賛成か、反対か」といった二項対立のおなじみの議論が跋扈(ばっこ)し、「子供たちの道徳性をどう育てるか」という本質的な課題の検討は「思考停止」したままである。

 そもそも私には、どうして「教科化」がそれほど問題であるのかがわからない。諸外国に目を転じてみてもドイツ、フランス、フィリピン、韓国など道徳や宗教などの価値教育を教科として行っている国が大多数だ。授業時間数も多く、教科専任の教員が授業を行う国も少数ではない。つまり「特別の教科 道徳」の設置は、日本の道徳教育がやっと世界スタンダードに追いつき始めたにすぎないのである。

 「思考停止」した議論の最たるものは、道徳の「教科化」が「修身科の復活である」というステレオタイプの批判である。ここでは、修身科が戦前までの教育に絶大な影響力を持っており、戦争を牽引(けんいん)した軍国主義や超国家主義といったイデオロギーは、修身教科書の中でこそ「注入」されたということが前提となっている。

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