日曜に書く

選挙時期に連呼される「お訴えさせていただきたい」に違和感覚えませんか? 論説委員・山上直子

 恒例、夏の参院選がやってきた。東京都知事選も追随して今年はさらに蒸し暑くなりそうだが、ここしばらく選挙となると気になる言葉がある。こんなふうに連呼されると、不快指数が上がってしまうのだ。

 「かようなわけで、有権者の皆様に、お訴えをさせていただきたいのであります!」

 座り心地の悪いイスに腰をおろしたような漠然とした違和感。「〈お〉訴えを〈させていただきたい〉」というフレーズが、どうにも引っかかる。

敬意は低減する

 「私も気になっていましたが、〈お~させていただきます〉という言い方は増えています。今後はもっと増えると思いますよ」というのは、東京外国語大学名誉教授で言語学者の井上史雄さん。

 確かに、テレビでも日常でも「ご提案させていただきます」「お送りさせていただきます」などと枚挙にいとまがなく、オフィスでは定着した気がする。一方で、多用されると丁寧すぎて滑稽だ。たとえば、「体験談をお尋ねさせていただきたいと思い、お宅にお伺いさせていただいたところ、たいへんご親切にご対応いただき…」といった具合。慇懃(いんぎん)無礼とさえ感じるが、どうだろう。

 井上さんによれば、普及の背景には「敬意低減の法則」があるそうだ。つまり、敬意の程度、言葉の丁寧さというのは、使われているうちにその度合いが下がって、しだいにさほど丁寧に聞こえなくなってくる。典型的な例が「貴様」で、かつては目上に使う言葉だったが、対等になり、現在では相手をののしる言葉に変化した。

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