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東北学院大の「震災学」 教訓を総括、伝え続ける

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故による被災後の支援活動を検証したり、郷土について改めて見直そうと、「東北発」の学問が各地で誕生している。中でも異彩を放っているのが東北学院大(仙台市青葉区)を中心に取り組んでいる「震災学」だ。震災5年の矢先に熊本地震が発生するなど災害は常に身近にある。震災学は、何をどのように伝えようとしているのか。(大渡美咲)

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 ◆多様なテーマを検証

 「震災学は(発災から)半年、1年たったときに、復興のヒントになることが書いてある。東北の経験が詰まっている」。雑誌「震災学」を出版する同市宮城野区の出版社「荒蝦夷(あらえみし)」の社長、土方正志さん(53)はこう話す。

 震災学は東日本大震災をきっかけに浮き彫りになった地域の課題や社会問題について多角的に検証。東北学院大の元副学長で学長特別補佐の佐々木俊三さん(68)が中心となり、平成24年7月に創刊した。

 東北学院大は震災直後の混乱期、学内にボランティアステーションを開設。全国の大学間の連携拠点として活動した。そうした中、佐々木さんは「震災は未曽有の災害だが、数年たてば必ず風化する。どこかが反省や検証を行い、大学が総括するべきではないかと考えた」という。

 「震災学」は年2回刊行しており、今年3月に第8号を発売。原発事故や仮設住宅、防潮堤などさまざまなテーマを扱い、現場の声と総括する視点を織り交ぜながら徹底検証している。書き手も大学教授や研究員だけではなく、ボランティアやジャーナリスト、会社経営者など多岐にわたる。

 ◆学問に垣根なし

 土方さんは「東日本大震災の問題だけを語っていても何も解決しない。過去の問題はどうだったか、他の地域はどうだったのかを、東北の被災者に伝えていく必要がある」と話す。

 大学では学問を専門分化しているが、現実の災害にはその垣根を超えて総合的に対処する必要がある。報道も同様で、当該地域だけで報じられるニュースに限らず、県境を超えて問題を共有する必要がある。震災学はそうした従来の分断を乗り越えて考察する必要がある、と訴える。

 土方さんらは熊本地震の今後の対応に役立ててもらおうと、現地に震災学の雑誌を送付した。日本列島は幾たびも大災害に見舞われてきたが、災害対応について検証した雑誌などはこれまでなかったからだ。

 佐々木さんも「熊本地震でも避難所の運営や避難物資の配布などで、東日本大震災と同じような問題が生じた。問題を検証し、課題を見つけていけば処理できるようになる。知恵を積み上げていく必要がある」と力説する。

 当初は3年で6冊の予定だったが、現在は4年目に入り、計6年間で12号まで刊行する予定。現場の声や現状を伝えることに重きを置いた1期目から、2期目は問題点の総括や整理を重視しているという。

 「伝えなければいけない問題は、時間とともに変化していく。いま大事な問題は何か。現場の声をどんどん反映している」と土方さん。

 学術誌ではなく雑誌という形態を取ったのも、大学の学問だけにとどまらず、市民自らが地域の問題だと捉えることで、関心や意識を高めてもらうことが狙いだ。佐々木さんは「震災に答えはない。問い続けたい」としている。

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