中国海軍の艦艇が領海侵入をした15日、鹿児島、宮崎をはじめ、九州の漁業関係者の間に不安の声が広がった。軍艦が航行した鹿児島・屋久島周辺は、マグロの好漁場が広がる。緊張が高まれば、漁業活動にも支障が出る。
「気持ちのよいものではない。(中国船が)ちょくちょく来るようであれば、影響を避けようと、東シナ海に出ていく船も増えるだろう。ただ、遠いので燃料代もかかってしまう」
宮崎県日向市漁協の幹部はこう語り、ため息をついた。同漁協に所属する30隻のはえ縄漁船が、今回、中国軍艦が侵入した海域を漁場とする。中国軍艦と遭遇した漁船はなかったという。
「国境の海」で活動する九州の漁業者は、国際情勢に翻弄される。
日向市も含め、宮崎県漁連に所属する100隻ほどの遠洋漁業船団はかつて、尖閣諸島(沖縄県石垣市)海域で操業していた。だが、平成24年9月の尖閣諸島国有化の後、中国公船が尖閣周辺の接続水域や領海を航行する事案が頻発した。
さらに25年4月、尖閣諸島領有権を主張する台湾との間に「日台民間漁業取り決め」が結ばれた。宮崎の船団が操業する海域で、台湾漁船の操業が事実上認められた。緊張の高まりで、警戒にあたる日本の艦艇の航行も活発になった。行き交う船が増えることで、結果的に、漁船のはえ縄が切れる事態も起きたという。