産経抄

舛添さんの「引き際の美学」…「ここまで耐えてきたのは、リオ五輪で東京を笑いものにしたくないから」涙のこの発言、やはりみっともなかった 6月16日

 甥(おい)っ子の満男が、とんでもないことをしでかした。初恋の人、泉の結婚式に乗り込んで、中止に追い込んでしまう。寅さんが説教を始めた。

 ▼「男は引き際が肝心だ」「泉ちゃん、おめでとう。どうぞお幸せに、電報一本打っといて、お前は空に向かって、今日一日よいお天気でありますように、無事結婚式が行われますようにと、それが男ってもんじゃないのか」。

 ▼今度は説教を聞いていたリリーが怒り出す。「バカバカしくて聞いちゃいられないよ。かっこなんて悪くたっていいから、男の気持ちをちゃんと伝えてほしいんだよ、女は」。映画『男はつらいよ』シリーズ最終作の名シーンである。世の女性はこぞって、リリーの啖呵(たんか)に拍手を送るはずだ。もっとも、恋々とする相手が地位や役職だったら、話が違ってくる。

 ▼東京都の舛添要一知事が昨日、ようやく都議会議長に辞表を提出した。今年3月、大名旅行のような豪華な海外出張が批判されたのが始まりである。以来、毎日のように発覚していた政治資金をめぐる公私混同の疑惑について、納得のいく説明は一つもなかった。

 ▼「ここまで耐えてきたのは、リオ五輪で東京を笑いものにしたくないから」。涙で言葉を詰まらせながら、五輪のセレモニー出席への執着を見せる場面もあった。しかし本会議で不信任案可決が確実になり、延命策が尽きたようだ。往生際が悪すぎた。

 ▼川北義則さんの『引き際の美学』にこんな記述がある。「『みっともない』という感覚があるから、人は自分の言動にブレーキをかけたり、レベルを上げようとがんばる」。舛添氏は頭がいい。行動力もある。機を見るに敏である。「みっともない」という感覚だけ、どこかに忘れて来たようだ。