世界勲章物語

ガーター勲章 陛下も一員、現存最古の騎士団 関東学院大教授・君塚直隆

 明治以降の3代の天皇と同じく、天皇陛下も1998年の訪英時にガーター特別騎士の称号を受けられた。儀礼に厳しいエリザベス女王が初めて授与した異教徒となられた。明治以降の日本の皇室と英国の王室が紡いできた絆に基づく「先例」が女王を動かしたのである。

 これ以降もキリスト教徒以外でガーター勲章を与えられた人物は、現在に至るまで存在しない。このため、ガーター勲章の授与をめぐっては、東南アジアや中近東の王侯たちと英国政府との間で「ひと悶着(もんちゃく)」起こることもたびたびあった。しかし英国史上最長の64年に及ぶ在位記録を誇る「卒寿」女王には、長年の伝統や慣習を覆す気はないようである。このあたりに英国王室の心意気を感じるのは、筆者だけであろうか。

 次回「金羊毛勲章」(ハプスブルク家/スペイン)は7月21日に掲載します。

 ■ガーターの由来

 なぜ「靴下留め(ガーター)」が騎士団の名称となったのか。さる伯爵夫人が舞踏会のさなかに靴下留めを落としてしまい、それを救ったのがエドワード3世だったと言われる。以来ガーターに「悪意を抱くものに災いあれ」というモットーを記したものが、騎士団の表象となった。創設から300年余で、頸飾(けいしょく)、青い大綬、星章、ガーターという今日の様式が整った。単一級の勲章であり、今でも君主個人の意思で授与される栄誉となっている。

【プロフィル】君塚直隆

 きみづか・なおたか 昭和42年、東京都生まれ。立教大文学部卒業後、英オックスフォード大留学を経て、上智大大学院文学研究科史学専攻修了。博士(史学)。専門は英国政治外交史。著書は『女王陛下のブルーリボン 英国勲章外交史』(中公文庫)など多数。

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