世界勲章物語

ガーター勲章 陛下も一員、現存最古の騎士団 関東学院大教授・君塚直隆

 この騎士団章に端を発するガーター勲章は、英国最高位の勲章であるだけに、「決まり」も多い。16世紀初頭から400年間にわたって「女性」に与えられることはなかった。それも20世紀とともに即位したエドワード7世の代から、歴代の王妃や王女にも授与されるようになった。現在も、アン王女やアレキサンドラ王女が特別騎士となっている。

 これと並んで長年授与される対象とされなかったのが「異教徒」である。そもそも騎士団とは中世キリスト教世界のなかで生み出された組織である。騎士に叙せられるのもキリスト教徒に限定されてしかるべきであろう。ところが、この掟が破られたのが19世紀半ばのビクトリア女王の時代のこと。大英帝国をロシアの南下政策から守るため、女王はオスマン帝国やペルシャ帝国と手を組まなければならなかった。19世紀後半には3人のイスラム教徒の皇帝たちにガーター勲章が与えられた。

 それも20世紀になって再び「綱紀粛正(こうきしゅくせい)」となり、1906年以降、キリスト教徒以外で騎士の称号を受けられているのは、明治・大正・昭和の3天皇と天皇陛下だけである。特に、昭和天皇(29年叙勲)のガーター勲章は、日英開戦(41年12月)とともに名誉が「剥奪」され、その30年後に訪英されたときに再び「回復」するという数奇な運命をたどった。670年に及ぶガーター勲章の長い歴史のなかで、一度剥奪された名誉が回復した事例は、昭和天皇ただひとりだけである。

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