5月21日午後、JR山形駅前。無所属元職の「野党統一候補」、舟山康江と共産党書記局長、小池晃が並んで街頭演説を行った。小池は全国の1人区で野党共闘の見通しが立ったことに触れ、「政党が市民の声に動かされての共闘だ」と強調。「戦争法廃止、立憲主義の回復」と訴えた。
舟山も「国のあり方をすべて壊す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は阻止する」と述べ、安倍晋三政権を鋭く批判した。
舟山は平成19年参院選に民主党から立候補し初当選。25年参院選は、みどりの風から立候補したが、自民に再選を阻まれた。だが、27万票余りの自民候補に2万票差までに迫り、3万3千の共産票を加えた単純計算だと逆転も可能となる接戦だった。
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この要因の一つが県内JAグループの政治団体「県農協政治連盟」(農政連)の存在だ。県内JA正准組合員は約15万人。農政連は絶大な「集票マシン」だ。国政選挙では長年、与党候補を推したが、前回はTPP反対の舟山を推薦した。
選挙後、自民県連と農政連とに亀裂が生じたが、両者は徐々に関係を修復。自民が昨年末、公募で公認候補としたのが元全農山形副本部長の月野薫だった。
「今回は推薦してもらえる」。県連会長で五輪相の遠藤利明は自信をのぞかせたが、結果は自主投票。与党との関係、3年前に支援した重み。双方を重視する農政連は意見を集約できなかったのだ。
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月野は「TPP批判だけではなく、現場の声を直接国に届けるべきだ」と訴えるが、政府の農業政策に対する県内農家の懸念や不満は根強く、どこまで理解が得られるかは不透明。両陣営の農業票争奪は今後、激しさを増しそうだ。
月野には県内35市町村のうち25の首長が支援を表明しているが、陣営関係者の一人は「課題は知名度。選挙戦までに浸透できるかが勝負」と指摘する。
実際、今月7日には人気グループ「SPEED」のボーカルで、自民比例候補の今井絵理子が山形入り。「月野先生は私の何百倍も知識の豊かな大先輩」とエールを送った。その2日後には首相の安倍晋三も訪れ、「私と同世代の月野さんをよろしく」と支援を求めた。
舟山陣営も負けてはいない。8日、元国土交通相で民進の馬淵澄夫が訪れ、14日には幹事長の枝野幸男も応援演説に入った。与野党幹部級が続々と足を運ぶ同選挙区は「全国有数の激戦区」(自民関係者)の様相を呈している。
4度目の国政選挙挑戦となる幸福の城取良太は減税や自主自立の国防などを訴えている。=敬称略(森山昌秀)
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◇山形選挙区立候補予定者
(1-3)
月野 薫 61 元会社社長 自 新 【公】
城取 良太 39 元会社員 幸 新
舟山 康江 50 元農水政務官 無 元 【民】【共】【社】