葬送

フィナーレは初音ミク歌う「銀河鉄道の夜」 作曲家・シンセサイザー奏者 冨田勲さん(15日、東京都港区の青山葬儀所)

 「同世代の仕事仲間を失うことが、どれほど悲しいか。僕は今さらのように思い知らされております」

 追悼の辞で、映画監督の山田洋次さん(84)は遺影にこう語りかけた。冨田さんは、山田さんの映画「学校」シリーズや「たそがれ清兵衛」などの音楽を担当。日本人で初めて米グラミー賞にノミネートされるなど世界的にも高い評価を得た。親交のあった米ミュージシャン、スティービー・ワンダーさんは「彼が遺(のこ)してくれた素晴らしい作品を祝福しましょう」とコメントを寄せた。

 祭壇は冨田さんが好きだった宇宙をイメージ。星のように光る約150本の白いカスミソウの周囲を菊やバラ、ガーベラやトルコキキョウなど約3560本が鮮やかに彩った。

 亡くなる直前まで音楽制作に意欲を燃やしていたが、11月上演予定の世界初演の公演「ドクター・コッペリウス」の打ち合わせの直後、帰らぬ人となった。喪主で長男の勝(まさる)さんは「父は倒れる直前まで創作意欲がありました。家族には冗談っぽく、『11月まで死ねなくなっちゃった』と申しておりました」とあいさつした。

 平成25年の公演「イーハトーヴ交響曲」の中の「銀河鉄道の夜」の映像が映し出され、公演に起用されたバーチャルアイドル「初音ミク」が歌いながら舞う華々しいフィナーレ。演奏が終わると、約800人の参列者は盛大な拍手を送っていた。

 5月5日、慢性心不全のため死去。享年84。(竹中文)

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