今年の「父の日」は6月19日。ギフトに使われる市場規模は「母の日」の1120億円に対して、420億円と半分以下だ(日本記念日協会、平成27年推計)。お父さんの存在感の薄さを示すようだが、逆に掘り起こしの余地が大きな有望市場ともいえる。今年の商戦では体験型の趣味提案が活発化。ターゲットは熟年世代の父を持つ大人の子供たちだ。
(重松明子、写真も)
スポーツ関連の仕事をしている村井亜紗子さん(28)は、「今まで父の日に贈り物をしたことはなかったけど、今年は泡盛を贈るつもり。父が定年を迎えて一緒にテニスをする余裕も生まれ、距離が縮まった気がする」。ビールを酌み交わす父の康真さん(65)は「これまでは子供の成長や活躍が喜びで、プレゼントがほしいなんて思わなかったが、実際にもらえたらものすごくうれしい」。
5月下旬の東京都江東区のオープンカフェ。インターネットショッピングモール「楽天市場」が開いた父の日のバーベキューイベントの一コマだ。使用された、薫製作りセット(2550円~)などの調理道具、Tボーンステーキ(4946円)といった食材は、父の日の推奨ギフトである。
楽天市場では、60歳を過ぎても趣味で生活を充実させている父親を「ロク充(ジュウ)」と命名。「お父さんをロク充にする 鉄板ギフト60選」と銘打った特設ページを開設し、料理、アウトドア、音楽など各分野の目利きが選んだギフトを販売。6月5日まで「早割」セールも行い、早期の囲い込みにも力を入れる。
「30、40代男女に、父の日に贈りたい物をたずねたところ、1位は『お酒』、2位に『趣味の道具』が続いた。父の日需要はこの5年間で3倍に伸び、特に今年は前年同時期の3割増と出足も早い」。広報担当は手応えを語った。
一方、百貨店の父の日商戦も様変わり。「以前はネクタイとポロシャツが父の日の2大定番だったが、家族の絆を意識した体験型の商品に軸が移ってきた」。そう語るのは「そごう・西武」商品部で父の日企画を担当する境野稔チーフマーチャンダイザー(54)。