無職で生活保護を受給していた夫妻が16年間で10人の子をもうけ、死んだ1人は火葬されず自宅で白骨化した遺体となっていた。大阪府吹田市のアパート一室で5月、衣装ケースの中から死後数年が経過した乳児の遺体が見つかった事件。大阪府警は死体遺棄容疑でこの部屋に住む白土(しらつち)憲昭(42)と妻、勇気(37)の両容疑者を逮捕したが、2人は「(埋葬などの)金に困っていた」とあきれた言い分を口にした。逮捕後に明らかになったのは、テレビ番組に登場するような幸せな「大家族」とはかけ離れた、あまりに無責任な出産ラッシュの実態だった。
衣装ケースが墓に?
「(死んだ子供は)あそこにいます」
5月12日午前、子だくさんの家庭が住んでいるとは思えない同府吹田市片山町の2DKのアパート。府警の家宅捜索を受けた勇気容疑者は悪びれる様子もなく指差した。その先には、服などの荷物に紛れ、粘着テープでふたが閉じられた段ボール箱が置かれていた。
捜査員が箱を開けると、中に入っていたのはポリ袋で密封されたプラスチック製の衣装ケース。さらにケースのふたを外すと、産着姿で毛布に包まれた乳児のほぼ白骨化した遺体が見つかった。
衣装ケースを墓に見立てたつもりなのか、ケースの中には土が入っており、遺体周辺には、おしゃぶりやぬいぐるみなどの供え物もあった。
司法解剖の結果、遺体は死後数年が経過していることが判明した。しかし、死因や年齢だけでなく、性別すら分からなかった。
勇気容疑者は遺体について「ミルクを飲まなかったから病院へ連れて行こうとしたが、(生まれて)数日後に死んだ」と話した。
府警は翌13日、死体遺棄容疑で憲昭、勇気両容疑者を逮捕。大阪地検は6月3日、同罪で2人を起訴した。