衝撃事件の核心

偽造カードでATM1800台から計20億円が一気に引き出された! セキュリティーの脆弱性を突いた大胆手口とは…

男らは「アルバイト」として不正引き出しを行っており、「偽造カードは中学時代の知人の男に渡された。引き出した現金は男に渡した」などと説明している。

男2人のような「出し子」のほかに、現金を回収する「受け子」グループ、偽造カードを作製するグループがあるとみられる。ある捜査関係者は「短期に集中させるなど計画はかなり入念だが、金の回収方法自体は特殊詐欺と似た構図。今回もこれらの出し子グループが動いた可能性はある」と指摘する。組織性の高さから、暴力団関係者が絡むと推測する関係者もいる。

「磁気ストライプ」は限界…求められる摘発と対策

「もう磁気ストライプのカード取引は限界ではないか」。事件を受け、ある銀行関係者はこう語る。

改めて指摘されているのは、磁気ストライプ式カードの安全性の低さだ。

普及が進むICチップ搭載のカードは、情報を暗号で保存するため、簡単に偽造することはできない。世界的にカードのIC化が進んでいるが、日本は遅れていて、いまだATMも磁気ストライプに対応せざるを得ない。

遅れは加盟店のカード読み取り端末の多くが磁気ストライプ式にしか対応していないためで、経済産業省は平成30年にもIC対応端末の導入を加盟店に義務づける方針だ。また、セブン銀は事件を受け、ATMでの1回の引き出し限度額を10万円から5万円に引き下げる。システムの安全性も向上させるという。

偽造カードによる不正引き出しをめぐっては、25年にも日本を含む世界26カ国で約45億円が奪われ、日本で関与したとみられるルーマニア人ら3人を警視庁が国際指名手配した。当時も海外カードが使えるセブン銀とゆうちょ銀が利用されていた。

事件をめぐっては、昨年12月にも関東を中心とした7都県のコンビニATMで約1億円が引き出されていたことも明らかになった。捜査関係者は「東京五輪に向けて海外カード対応のATMは増えることが見込まれている。利便性と安全性を両立するため摘発と対策を強化していきたい」と話している。

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